我が名はカサンドラ

私の場合は、健康上の理由で手術をひかえており、一応死のリスクがあるので、思い切って夢をかなえた昔の彼氏に連絡をとってみた。「おめでとー。」と。死んだらお祝いも言えない。

本当に昔で２０年くらい前の関係である。
相手も大喜びですぐに返事をくれ、それから毎日なんということのないメールを送りあっている。

多少長く生きていると、色々あるんだわ、お互いの知らない色々なアレが。そんな理由で話題は尽きない。昔話も楽しいです。今は誰は何していて、こんな家庭だよ、などなど。

でも、何が一番楽しいかっつーと、こちらの質問にちゃんとレスポンスがあること。普通のコミュニケーションとはこれぞ！という感じ。

こちらが投げる。相手が受け取る。相手が投げ返してくる。そして分かち合う。これこそがコニュニケーションの醍醐味

返ってくるのは当たり障りのない受け答えではない。ちゃんと彼が考えた、彼なりの答えだということがよーーーーくわかる。

カサンドラな私が普段どういうコミュニケーションをとっているかというと、こうだ。
うちのアスペは社会適応のために社会通念を自分の意見として採用するため、杓子定規がきつい。
自分で考えた意見をまとめて、それを発表するなんていう高度なことは、彼自身が興味を持ち、好んで考えたいごく限られた一部のジャンルにおいて、である。それと食い扶持である仕事に関して。

そのほかのどうでもいいこと、は彼にとって考える価値も意味もないのだろう。
「そんなこたあ社会では常識、と言われてる建前じゃないか。」というつまんねー意見しか言わない。
なぜそう思うのか？と理由を問うてみても、「昔からそうだ」とか「きまってるだろう」などの貧しい対応しかできない。

変わらぬ伝統を忠実に守るタイプはこういう人間なのかもしれない。こだわり以外は疑問を持ち、改善しよう、という意思はない。

また、基本的に一方通行の人なので、こちらの質問には一切の反応なく、だまーっておいて、まったく関係のない自分の話を長々と始めたりする。そんなコミュニケーションなので、かかわるとものすごくストレスがたまるのだ。

それと疎通性が悪いので私のいう事が一発で分からない。分かったふりをして流すので、何度言っても頭に入らないことがしばしばある。分かるようにかみくだいて、かみくだいて他の例を持って話をし、一回では忘れてしまうので、定期的に何度も同じ話をせざるを得ないことも頻繁にある。そうでないと約束事はうそのように守られない。

こんな人いるのか？というほどに子供の重要事項でも平気でほったらかしにする。現に私の病気の手術にも立ち会うつもりがなく、こちらが「一般に手術には立会人が必要で、これは常識で配偶者が立ち会うべきものなの。だから会社を休みなさいね。　しっかりスケジュール帳に記入し、会社に休暇の願いを早く提出してね」と言わないと「何で俺が？」状態である。ちなみに前回の手術でも姑さんに言われるまで自分ではさらさら立ち会う気がなく、子供の面倒も見るつもりもなく、ふらふらしていた。実家が近いのでジジババがなんとかしてくれる、とたかをくくっているのだ。いや、そこまで考えていないかもしれない。おまけに、遠方で手術することにしたのだが、手術、入院している私に夫の勤務先の営業パンフレットを配ってくれ、という。そんな男なのだ。

ちなみにうそのように破られた約束にかんして、夫を少しでも責めようものなら俺は悪くない、と居直ったり、いじけて実家に帰ったり、子供に八つ当たりしたりすることがおおい。今は「いつでも離婚してやる」と私に言われたのが忘れられないようで大人しくはなっているが、脳内は相変わらずだ。

そんな療育の先生のような生活を十年以上続けてゆく中で、私の心は無駄に、しかも大きくエネルギーをそがれ、希望も夢もなくなってしまった、、。そして私は死ぬことばかり考えるようになった、、、。周りは分からないだろう。
なにせニコニコ楽しそうな私を見ていることが多いんだから。だって、周りと接しているときは楽しいんですもの。

でも内心の限界はとっくに超えていて、しばしば抗欝剤などの世話になっていた。子供の処方されたものをもらったり、個人で輸入したサプリメント、バッチフラワー、、、なんでも試した。そうやって、なんとか正気を保っていた。

そうして、私のちょっとした影は子供たちに影響を与えているんだろうことは想像がつく。次男の不登校はこういうところに原因がありそう。ちなみに今は通学できています。

とにかく地獄生活が長いと、自分が地獄にいることが分からない。でも、こうして、縁を作って、普通の人との対話を緊密にもつようになると、それが、とてもとても、心を回復させてくれるのだ。

カサンドラ症候群の人へ、一番のお勧めは自分で自分を愛し、慈しむ事。自分の愛情タンクは自分で満たすこと。
そして二番目のお勧めはアスペじゃない異性との緊密なやりとり、これだと思う。
同性の友達はなんの苦もなくみつかるけど、違うんだ。異性であることがポイント。結婚していると難しいけど、カサンドラの人には必要不可欠だと思う。夫婦の関係性のリモデリング、というか。もう毒されちゃってますから。

自分の配偶者と関わる事に比べて普通の人とのかかわりはどれだけストレスがないか？楽しい会話、ツーカーなやり取りで、どれだけうるおいと健康が戻ってくるか？その差は自分が想像していたよりもはるかに大きい。

たかがこんなメールの会話でも身体の辛さがどんどん消えてゆく、、、。
そして、ここを抜け出すエネルギーと勇気がたまってくるのだ、、、。
今は昔の彼をぐぐってみると、結構でてきます。それだけでも心が晴れるかもね。
がんばって抜け出そう。そしてこころ穏やかな生活を手に入れるのだ。